久しぶりの

長野（北陸）→上越

　


ああ、こんなにも愚かなことがあるだろうか。


「じょうえつせんぱい」


ぼくがすくってあげたかった。
ぼくがたすけてあげたかった。
皮肉屋でさびりがりやのあの人を、ただしあわせにしたかった。
大きくなったら、きっとできると思っていた。

それがとんでもない幻想だなんて、思いもしなかった。



「上越先輩」
「何を泣いてるの………長野」

違う。僕はもう、小さくて弱く脆かった長野じゃない。
そんな風に彼の名を優しく呼ばないでほしい。
何も知らないただ守られるだけの存在だった長野は、今やあなたの背丈さえ越え、大きな力を持ち、そして、その意味に気付いてしまった。


自分が、あなたを奪う、おそろしい怪物であったこと。




あなたはわかっていた。
僕が大人になるということが、あなたのどんなひどい絶望であることか。

それを僕がわかっていなかったことも、あなたはわかっていたんだ。